赤い流れ星3
「おやおや、どうしたのかな?」

看護師らしき中年の女性がやってきた。



「ダメじゃないか、泣かせたりして。
あれ?どの人があんたの旦那なんだい?」

看護師は俺達を順番にみつめる。



「ち、違います!そうじゃないんです!」

「違う?まぁ良い。とにかく、そろそろ授乳の時間だよ。」



(じゅにゅう?)



その言葉から想像する漢字は『授乳』しかない。
でも、病気の野々村さんが授乳ってどういうことなんだ?



野々村さんは涙を拭い、看護師と共に歩き出した。
俺達もそれについて行く。



(え……)



行き着いた先は、新生児室だった。
ガラス窓の向こうには、小さな赤ちゃんがたくさん並んでいた。



「どういうことだ?」

「わからない。」

「美咲さんが子供を産んだんじゃないですか?」

「えっ!?」



アツシの言葉に、あの時のことが思い出された。
まさかあの時…たった1回で、そんな…
いや、違う。
あの時の子だとしたら、日にちが合わない。
じゃあ、誰の子だって言うんだ!?
野々村さんに、付き合っている人がいたというのか?



混乱している時、さっきの看護師が出てきた。



「あんただね!」

「え?な、何がですか?」

「野々村さんの旦那だよ。」

「え、ど、どういうことですか?」

「よく見たら女の子とそっくりだよ。」

そう言って、看護師は笑った。
俺はまだ意味が分からず、その場に立ち尽くしていた。
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