赤い流れ星3
「野々村さん、そのネックレスね…パワーストーンがついてるんだけど、そのパワーっていうのが恋愛運アップなんだって!
きっと、独身の私達に良いお相手がみつかるようにって考えてくれたんだよ。
あ、実は私のも恋愛運アップの石なんだって。
自分こそ、早く結婚しろって感じだよね。
それに、パワーストーンで恋愛運アップなんて、そんなこと信じられないと思うけど…私だって信じてないけど、ま、とりあえずは兄さんの気持ちだから……」

私はそう言って、へらへらと笑って見せた。



「……そう…ですね。
青木さんは、私のことを考えて下さってるんですね…
……ありがたいです。」

野々村さんはなんだか沈んだ声でそう言うと、やっと目の前の包みに手を伸ばした。
だけど、それを開けることはなく、そのままそっとバッグの中に仕舞った。
やっぱり…本当はもらいたくないんだ。
でも、兄さんとは仕事の関係もあるし、いらないなんて言えないよね…
悪いことしちゃったな…



「ほ、ほら、見て、野々村さん。
実はね、これ、野々村さんのと石違いのお揃いなんだ。」

私は、服の中からチェーンをひっぱって、モルガナイトのトップを見せた。



「私とお揃いなんて気持ち悪いでしょ?
だから、無理につけなくて良いからね。
ちなみに、野々村さんのはムーンストーンだよ。」

言った後で、我ながら良いことを言ったと思った。
野々村さんがネックレスを付けなくて、そのことで兄さんが何か言ったら、女同士でおそろいなんて誰だっていやがるよって言えば良いんだ。
十代の頃ならともかく、大人になってから女同士でおそろいなんてありえないもんね。



「えっ!?ムーンストーン?」

「…ん?野々村さん、ムーンストーン知ってるの?」

「え…ええ……好きな石なんです。」

「そ、そうなんだぁ…じゃあ、良かったね。」



良かったのかどうなんだかよくはわからないけど、とにかくそのことでちょっとだけ野々村さんの顔に笑みが浮かんだから、私はとりあえずほっとした。
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