赤い流れ星3
「じゃあ、そろそろ…」

「夕飯を食べましょうよ。」

兄さんがこの気まずい観光を切り上げようとしたら、母さんがそんなことを言った。
母さんはこの気まずさがなんともないんだろうか。
早くホテルで休めば良いのに。



「……何が食べたい?」

「私はなんでも。」

「父さんは?」

「そうだな、出来れば和食が良いかな。」

「わかった。」



兄さんは、お店に電話をかけていた。
予約しないといけないお店なのかな。
確かにお腹は空いてはいるけど、こんな状況で食べられるかな。
相変わらず静かな車に揺られ、しばらくすると、店に着いた。







「なかなか良い雰囲気のお店ね。」

珍しく、母さんが店を褒めた。



「接待でたまに使う店なんだ。
味も申し分ない。」

「あんた…仕事はうまくいってるの?」

「まぁ、程々にはね。」

「そう…それなら良いけど。
美咲さんって人、そんなに収入はないみたいだけど、それでも大丈夫なのね。」

「あぁ、問題ない。
俺の収入だけで、十分やっていける。」

「子供を育てていくには、何かとお金がかかるのよ。
しかも、ふたりもいるんだから。
あんたも元気でいなくちゃだめよ。
もうあんたは自分ひとりの体じゃないんだからね。
あんたは、美咲さんと子供を養っていかないといけないんだから。」

珍しく母さんがまともなことを言った。
兄さんは静かに頷いた。

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