赤い流れ星3
「美幸さんのその石…綺麗ですね。」

「うん、モルガナイトっていう石らしいんだ。」

「モルガ…ナイト……モルガナイト!?」

「……野々村さん、モルガナイト知ってるの?」

「い…いえ…し、知りません。」



野々村さんは、どこか様子がおかしいように思えたけど、モルガナイトに何かいやな思い出でもあるんだろうか?



「野々村さん…あのね……」

「なんですか?」

「あの………」



実は、私にはこの前から話したいことがあった。
でも、兄さんには話しそびれて…それで、今、ついに話しかけてしまった……だけど……



「ねぇ、食後にこのケーキ食べない?
この前食べたらすごくおいしくて、今日で三連チャン!
でも、本当においしいんだよ!」

「そうなんですか?
じゃあ、ぜひ食べてみますね。」



私は直前になって、話題を変えた。
私が言いたかったのは、本当はそんなことじゃない。



私が話したかったのは、まるで記憶のないハート型の指輪のこと。
おばあちゃんの家からこっちに来る前日の晩、それは、私の服のポケットからみつかった。
サイズは私の小指にしか入らない細いもの…いや、きっと標準体型の子だと薬指くらいのサイズだと思う。
母さんや父さんが、少しくらい、おしゃれをしなさいって、今までにアクセサリーを買ってくれたことは何度かあったけど、つけることはまずないから、実家の私の部屋に全部まとめて置いてある。
それに、おばあちゃんの家に来てからはもらってないし、自分で買うことなんて絶対にない。
こんなデザインのものがおばあちゃんのものであるはずはないし、人と接触することもそんなにないからたまたまぶつかった拍子にポケットに入るなんてこともないだろうし、お酒は飲まないから酔っ払って買ったことを覚えてない…なんて事もあるはずない。
だから、どうにも理由がわからなくて気持ちは悪いものの、その反面、なぜだかものすごくひかれるっていうのか、大切な気がしてしまうんだ。
その謎の指輪が、多分、モルガナイトだと思う。
昨日、このネックレスを見た時、あの指輪と同じ石だって感じてそれで見てたら、兄さんが買ってくれた。

誰かにこの話を聞いてほしいと思いながら、でも、話すと気味悪がられそうな気がして、結局、今も話せなかった。
もやもやするけど…話すのはもう少し親しくなってからの方が良いかもしれない…なんてことを考えて…
ただ、勇気がないだけなんだけどね…
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