赤い流れ星3




「こ、こんにちは!」

「いらっしゃ…い…」



今週はずっともやもやしたものをひきずったままだった。
ただ、今週はいつもにも増して忙しく、お陰でそのことばかりを考えずにすんだ。
野々村さんから連絡がある度、ちょっとしたわだかまりのようなものは感じたが、表面上は何もないふりを決めこんだ。
だから、彼女は特に何も感付いてはいないはずだ。
あんなことくらいで怒ったり問いただすのはおかしい。
だから、早く忘れようとは思っている。



そして、瞬く間に時は過ぎ、大河内さんの家に行く土曜日となり、決めておいた時間通りに野々村さんはやって来た。
扉を開けた俺は、すぐに野々村さんのネックレスに気が付いた。
なぜだ…気に入らないのに……俺に気を遣っているのか?



「あ…あの…青木さん…
先日いただいたネックレス…」

「野々村さん……気を遣わないで下さい。」

「い、いえ、私…気を遣ってなんか…
私…昔からずっとムーんストーンが大好きで……
だから、これをいただいた時もとても嬉しかったんですよ。」



野々村さんのこの言葉をどう受け止めるべきだろう?
見た目にはとても嘘をついているようにも、無理をしているようにも思えない。
だが、それならなぜあんなメールを…



「でも、美幸とお揃いだから……
女同士でお揃いなんて気持ち悪いって、美幸に言われてしまいました。
配慮が足りずにすみません。」

「そ、そんな…!
私…気持ち悪いなんて思ってません。
今まで私は誰かとお揃いのものを持ってたなんてことはありませんでしたし、だから、却って新鮮というのか…ちょっと気恥ずかしいような気はしますが、けっこう嬉しいんですよ。
それに、お揃いとは言っても、美幸さんのものとは石が違うせいか、同じものって感じは全然しませんよ。」

確かに野々村さんの言う通りだった。
美幸が付けているものは見なれているが、今、目の前にいる野々村さんのムーンストーンとは印象がまるで違う。
だから、お揃いという雰囲気は感じない。



では、あれは美幸だけの想い?
野々村さんは本当にそんなこといやがってはいなかったのか?
それなら、なぜあんなメールを…
俺は、心の中のもやもやを振り払いたくて、率直にそのことを訊ねてみた。



「野々村さんの先日のメール…なんだかとても素っ気無かった。
だから、俺……」

「あ、あれは…」



「野々村さん、お待たせ~!」

野々村さんが何かを答えようとしたその時、最悪のタイミングでアッシュ達が現れ、話はそこで中断されてしまった。
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