赤い流れ星3
確かに、アッシュさんの言う通りだと思う。
まだ知り合って間もないし、ずっと年上の…しかも、こんな大金持ちのおじいさんのことをKEN-Gさんなんて、外国人でもない限りなかなか呼びにくいはず…
それに、野々村さんは、私のことだって、いまだに「美幸さん」と呼んでくれてる。
私なんて野々村さんより年下なんだし「さん」じゃなくて、普通「ちゃん」付けにならないだろうか?
なんなら呼び捨てだって構わないのに…
そんな野々村さんが、おじいさんのことを気安くKEN-Gさんって呼ぶのはなんだかちょっとおかしいような気がした。
そんな風に呼ぶのはやっぱり親しみを感じてるからで…おじいさんと早く仲良くなりたいからじゃないだろうか?
野々村さん、私には何も言ってくれないけど、もしかしたら、意外と二人で会ってるのかもしれないね…
そんなことをふと思うと、少し野々村さんへの印象が変わった。
兄さんにも良い顔をして、影では着々とおじいさんに接近してて……
なんていうのか…意外と、すごい人なんだな…みたいな、ちょっと意地悪な見方に…







「あぁ、本当に良いお湯だった。
身体の疲れが一気に吹っ飛んだ感じだよ。」

私達が他愛ない話をしていると、浴衣に着替えた兄さんとマイケルさんが戻って来た。



「大河内さん、どうもありがとうございました。
こちらは最高のお湯ですね。気持ち良かったです。
マイケルが毎日入りに来たいなんて言ってましたよ。」

兄さんはそんなことを言って笑ったけど…
それがさっきのことへのフォローだってことは、妹だからすぐわかる。



「じゃ、私もマイケルさんと一緒に来ようかな?
ここの温泉に毎日入ってたら、お肌すべすべになりそうだね!」

「あぁあぁ、ええとも…
いつでもおいで。」

「やった~!」

わざとそんなことを言ったのは、兄さんへの協力のつもりだった。
多分、兄さんは気付かないだろうけど…兄さんには何かとお世話になってるからね…



「カズ…今日はね、KEN-Gが、おいしい料理屋さんに連れて行ってくれるんだって!」

「へぇ…それは楽しみですね。
どんなお店なんですか?」

「最近オープンしたばかりの創作料理の店なんじゃよ。
店の造りは和風なんじゃが、洋風な料理もけっこうあるし、こういうものが食べたいといえばなんでも考えて作ってくれるから、きっとおまえさんにも気に入ってもらえると思う。
あ、風呂上りにビールでもどうじゃ?
一杯ひっかけてから出掛けるとするか…」

そう言うと、おじいさんはまるでファミレスの呼び出しみたいなものを押して、お手伝いさんに指示をした。
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