赤い流れ星3




「とってもおいしいね!
このソース、一体何が使われてるんだろう!?」

アッシュさんは料理が運ばれる度にそんなことを言いながら、笑顔でそれらを口に運ぶ。
ずいぶんと、このお店が気に入ったみたいだ。
確かに、見た目はフランス料理みたいに鮮やかで綺麗だし、おいしいのもおいしいけど、私はとにかく野々村さんのことが気になって、食事どころじゃなかった。
……とはいえ、一応、食べてはいたけど……



「はい、これでOKだよ!
ボクとマイケルとカズと美幸ちゃん、それに野々村さんの携帯番号とメアドは入った。
次に使い方なんだけど…」

アッシュさんが、おじいさんの隣でスマホの説明をする。
おじいさんはアッシュさんの説明に真剣に耳を傾けていた。



「最近はスマートフォンを使われる方が増えてきましたね。
やっぱり、便利なんでしょうか?」

「え……あ、そ、そうかもしれないね。
私も興味はあるんだけど、まだなかなか手が出せなくて…」

野々村さんに不意に話しかけられて一瞬焦ったけど、私はいつもと変わらない態度で答えた。
野々村さんもいつもと変わらないっていうか…こうしてしゃべってると、野心のあるような人にはとても思えない。
でも…そういう人の方が実際は野心家だったりって事は良くある話。
それに、よく考えてみれば誰だってお金はほしいよね。
野々村さんは年齢も年齢だから、結婚には好きとかなんとかそんな夢みたいなものよりも安定感を求めただけなのかもしれない。
おじいさんは大金持ちだからこの先も生活面で苦労することなんてないし、しかも、高齢だから
あと何十年も生きる筈ないし、じきに莫大な資産が自分のものになるわけで…
その上、おじいさんは明るくて面白くて、全然いやな人じゃないから、結婚したいって考えるのも自然なことなのかもしれないね。
うん、きっとそうだ。
野々村さんが特別悪いってわけじゃないんだ。
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