赤い流れ星3
「そうですよね。
私も興味はあるんですが、文字を打つのがタッチパネルだと打ちにくいんじゃないかって気がするんですよね。」

「今はテンキーがついてるのもけっこうあるよ。」

「えっ!そうなんですか!?
だったら、使いにくいこともないし、良さそうですね~!」



「おまえさん達は、まだ普通の携帯を使っておるのか?」

私達の会話が耳に入ったのか、おじいさんが不意に顔を上げて私達の方を見た。



「うん、なんだかんだ言っても、やっぱりまだ高いしね…」

「よし、それなら、わしが買ってやろう!」

「えっ!ほ、本当!?」

咄嗟に答えた私の頬が急に緩んだのが自分でもよくわかった。



「あぁ、二人にはお土産をもらっておるし、これからメル友になってもらう記念じゃ。」

「わぁ!嬉しい!」



嬉しすぎるよ!
先週は兄さんにゲーム機を買ってもらって、そして今日はスマホ…
もしかして、今月の私は良い運勢なんだろうか!?



(……あ、でも……)



頭をかすめたのは、兄さんの顔だった。
ご近所ってことだけでそんな高い物を買ってもらうなんて…って、どうのこうのって言われるんじゃないだろうか…?
でもでも、こんなチャンスは滅多にないよ。
チャンスは生かさなきゃ!
そうだ…黙ってりゃ良いんだ…
兄さんは同じ家に住んでるとはいえ、しょっちゅう私と一緒にいるわけじゃないんだし、兄さんの前で携帯を使わないようにすればバレないんじゃ…



「わ、私は今ので十分なので……」

野々村さん…なに、つまらないこと言ってるんですか!?
そんなこと言って、おじいさんの気が変わったらどうすんのよ!



「野々村さん、せっかくおじいさんがこう言ってくれてるんだし、断っちゃ失礼だよ。
それに、私達もスマホだったら、おじいさんが使い方とかわからなくなった時に教えてあげられるじゃない!」

私っていざという時には、本当に悪知恵が働くよね…
考えることもないまま、ほとんど反射的に私はそんなことを言ってたんだから。



「その通りじゃよ。
遠慮はいらんよ、野々村さん。
その代わり、たまにはメールやおしゃべりの相手をしておくれ。」

「そ、そんなことならもちろん…!」



良かった…
野々村さんが頑なにいらないなんて言わないでいてくれたことに、私はほっと胸を撫で下ろした。
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