赤い流れ星3
side 野々村美咲




「野々村さんか?」

「は、はいっ。
KEN-Gさんですね。
今日はいろいろと本当にどうもありがとうございました。
……あの……どうかなさったんですか?」

「いや、少しスマホのことでわからんことがあってな…」

「私にわかるかどうかわかりませんが…どんなことですか?」



KEN-Gさんからの電話は、スマホについての使い方を訊ねるものだった。
私のとは機種が違うし、なんといっても私は機種変したばかりなのにわかるかしら?と不安はあったけど、わからなければネットで調べてあげようと思った。



「えっと…それだったら、多分……あ……すみません!
KEN-Gさん、電池が切れそうです。
家の電話からかけ直します。」

「なにを言うとる。
わしの用事なんじゃから、わしの方からかける。
番号を教えてくれんか?」

「え……それじゃあ……」

私は家の電話番号をKEN-Gさんに伝えた。
折り返し、KEN-Gさんから電話があって、私にわかるような簡単なことからパソコンで調べないとわからないような質問まで、時間をかけてなんだかんだと話し合った。
KEN-Gさんは飲みこみも早いし、いろいろ調べたおかげで、私も使う前からいろいろなことがわかって良かった。



「時に、野々村さん…」

「はい、なんでしょう?」

「あんたは、和彦さんの会社でどういう仕事をしているのかな?
確か、ライターさんじゃったな?」

「えっ…?
わ、私の仕事ですか?」



KEN-Gさんの思い掛けない質問に、私は躊躇いながらもどう答えようかと焦った。



「えっと…会社のPR文とかHPに載せるニュースの原稿を書いたりとか社報とか…まぁ、いろいろですね。」

本当のことは言えないから、私は極めて曖昧に答えた。



「そうか…なかなか忙しそうじゃのう…」

「ま、まぁまぁですね。」

「ところで、野々村さん…おまえさん、小説は…オリジナルの小説等は書いたりせんのかな?
ほれ、最近は携帯小説が流行っとるじゃろ?」

「い、いえ…私、小説は全然駄目で…
残念ながらそういう才能は全くないみたいです。」

「それじゃあ、読むのはどうじゃ?
携帯小説を読んだりはせんのか?」

「え…えぇ…気にはなるんですが、たくさんありすぎてどれを読んだら良いのかわかりませんし、最近、ゆっくりと読書をする時間もあんまりなくて…」

特におかしな会話ではなかったけれど、KEN-Gさんが妙に携帯小説にこだわってらっしゃるのが少しだけ気になった。
KEN-Gさんは若者の流行りにも敏感だから、そのせいなのかもしれないけれど…

< 95 / 761 >

この作品をシェア

pagetop