叶ってはいけなくて愛しくて
「奏多、好きだよ。」
そう言って、優しくあたしの髪を撫でる人はあたしの彼氏。
山口 彪。
彪くんはあたしの彼氏であり、バスケ部のキャプテンだ。
「ありがとう、あたしも彪くんが好き。あたしの彼氏になってくれてありがとう。」
精一杯の笑顔であたしは彪くんに振り向くと…
チュッ
微かなリップ音と彪くんの吸い込まれそうな瞳が見えた
「ぅ…ばーか。。。」
照れながら、言ったけど…ホントはすごく嬉しかった。
5ヶ月付き合って、キスだって手だって繋いだコトさえも、なかったから…
「ごめんな…こんなに強引に…」
彪くんは少し顔を曇らせてあたしの耳元でささやいた。
「ぅぅん、ありがとう…大好き。」
あたしは頬に暖かい雫を感じた。
「奏多??」
急に名前を呼ばれた。
「俺は明日からこうやって奏多に触れられなくなる。もぅ、会えない。」
あたしは声を失った。
大好きな彪くんがあたしの前を去るなんて、考えられなかったから…。
「ぇ…??ふふっ、悪い冗談はよしてよ。本気にしちゃう。」
「ごめんな…奏多…。これから奏多を一生守っていくはずだった…でも…俺の夢を知ってるか??」
声なんて出せない…
彪くんの声のトーンが低かったから…
「別れよう。」
彪くんは決断のコトバをあたしに押し付けた。
「わからないよ…説明してよ…。」
「…俺は奏多を守ることが出来ないって言ってるんだよ。恋愛禁止になったんだ。ごめん…。」
恋愛禁止…
あたしにはそのコトバにすがることしか、そして、そのコトバを信じるしかなかったから。
「わかった。」
あたしのホントの気持ちはわかってなんかいない。
ここで泣きたかった。
でも…彪くんがそれ以上に大切な人で、それよりも儚くて愛してたから。