嘘つきラビリンス
「あ、あともうひとつ足していい?」

「え?」


トーマは思い出したようにルールを書いた紙にもう一文書き足していく。


 5.お互いを好きにならない


「なに、それ」

「書いたまんま。俺のこと、好きにならないで」


……なんて自信過剰。


「なるわけ無いでしょう? ホストの彼氏なんて要らないし」


嫌味を込めてそう言うとトーマは「よかった」といつもの人懐っこい笑みを見せる。


「でも、理由は聞いていい?」


私はトーマを好きにはならない。

それは分かっていたけど、好きになってはいけない理由は聞いてみたかった。すると、


「好きになったら、うまく共同生活できないんだよ。僕の経験上」


トーマはそう答えてくれた。

そう、なのかな?

そうかもしれない。

私にはよく分からないけれど、


「いいよ、それも条件に入れて」


そう答えておいた。

だって、こんなホストなんて好きになんてなるはず無いもの。
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