春色デイジー
「しかも蒸し暑いのにねー。とりあえずその顏やめなよ、美人が台無し」

「優花が可愛いから問題ないわよ」


いや、訳が分からんのですが。


真子の165cmの身長から繰り出される両手によりくしゃくしゃと頭を撫でられ、10cmは低い私のチョコレート色のボブはいとも簡単に鳥の巣化を遂げる。猫毛だから、すぐに絡まる。しかも梅雨。


私の髪の毛を苛めるのに飽きたらしい真子は、何事もなかったかのように私の隣を歩く。
手櫛で髪の毛を整えつつ、ふわあ、と欠伸をひとつ。


体育館に全校生徒が入るなんて暑いし湿気多いし。入る前からげんなりしてしまう。



予想通り。


じめっとした湿度と、体育館特有のボールのゴムの匂い、詰め込まれた生徒達の熱気が身体に纏わり付き、気持ち悪いことこの上ない。

空気が淀んで見えるのは、決して気のせいなんかではない。

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