春色デイジー
……うそ、
同時に背中にひやり。冷たい、良くない汗が流れた。
体育館の前方、ステージの上には見知った顔。
「えー、体調を崩し入院された英語の川岸先生に代わりまして、臨時で来て頂くことになった酒井先生です」
教頭の声は私の耳を素通りし、つい昨日見た、まだ記憶に新しい彼を凝視する。
「(……はる、とさん)」
音にはならずに消えた。
教頭からマイクを受け取った彼は、私のそれに気付いたかのようにすっとこちらを一瞥。これだけの人数がいれば気付く訳がないけれど、自意識過剰を言われてしまえばそれまでだけれど、目が合った。ような気がした。
そして、まだはっきりと残る頭の上に乗せられた感覚が風邪のようにぶり返す。そこに一瞬だけ自分の手を置き、真っ白になるとはこのことか、と妙に冷静な私がいた。