春色デイジー
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キーンコーンカーンコーン



ぴく、

急に暗闇の世界に割り込んできた音に肩が上がった。


先程の思考は何処かに飛んで行ってしまっていたようだ。要するに、寝ていたってことなんだけど。人間、欲望には正直だ。きっと睡眠欲が一番強力なのではないかと思う。



「では、今日の授業は終わりまーす」

先生の穏やかな声が鼓膜をノック。先程よりは、いくらか目が覚めた。


学級委員長が号令を掛ける。三井さん、だっけか。


と、教科書などの荷物を持ち上げた先生にクラスの3分の2程の女子が群がった。里奈を含む彼女たちの目は逃すか、とでもいうような捕食者のそれであった。正直、なんか、凄い、怖い。

意味も分からず里奈に牽制されている私は、出来るだけ彼と関わらないことがきっと最良のルートであることぐらい予測できる。


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