春色デイジー
本当、先生はマイペースだ。そこに巻き込まれている阿呆な生徒は紛れもなく私だ。


鎖骨の上でワンカールさせた私の髪の毛を、弄ぶ指先に思わず目がいく。すっと伸びたそれは、綺麗。


そのまま、右頬に絡みついた指先がくすぐったくて身を捩る。じんわりと、熱を持ち始めた頬を見られたくなくて、きっと睨む。



「噛み付かないでね?」


楽しそうだ。腹が立つほどに楽しそう。

挑戦的な口角に、色を孕み嘲笑うかのような掠れた声で呟く。


いちいち、ぴくりと肩を上げてしまう。それをまた面白そうに、喉奥を鳴らして笑う。


最後に私の唇の形をなぞるように撫でた先生は、名残惜しそうにその指を離した。

ああ、もう。焼けそうに熱い喉元。痺れて動けない身体。既に火傷をしてしまっている、予感。


「そんな顔しないの」

「っ、嫌いです」

「光栄だよ」


するりするりと躱されることが、もどかしい。

遊びの一環で楽しむ先生に、余裕のない自分が恥ずかしい。遊ばれていると分かっているのに、その相手が私で良かったと心の隅っこで思ってる。きっと真正面から突っ込んで大火傷。いつか慰謝料請求してやる。

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