春色デイジー
ジーーーーーーーッ
先程から受けていた視線に、そろそろ我慢の限界です。あ、只今限界点を突破しました。
「……ああ!もう何ですか?」
痺れを切らして視線の主、酒井先生の方を向く。
先生の黒目がちな瞳に、酷く不機嫌そうな私が映っている。うわ、ブサイク。
何かを含んだようににこにこと笑顔を貼り付けた先生。不気味だ。
「んー?カフェオレ美味しそうだなーと思って」
食後の日課と化したカフェオレをずびび、と啜る私にさらに笑みを濃くする先生。
梅雨の季節の晴れた日は空気も洗濯されたみたいで、蒼々としている。快晴が心地良い。
「美味しいですよ。自販機に売ってるんでどうぞご自由に」
手の甲でしっし、と先生を追い払おうと試みる。何だか悪い予感しかしないから。
「うっわ、ひど。西口さん何か言ってやって」
「ちょっと、真子を巻き込まないでください!」
「じゃあ、一口ちょうだい」
「もう空です!……で、用件は?」
「遊びに来た」
「一回沈んどきますか?」
ちぇ、と拗ねたような表情を作る先生は、いつもより数倍幼く見えた。元々中性的なルックスであるため、ふとした瞬間に幼くも見えやすい。