春色デイジー
そんなことを考えながら顎に手を付いて眺めていると、二度目の凝視に遭う。今度は隣から。
真子だ。
おそるおそる、顔を向けると今まで黙っていた真子の探るような眼に捕まる。
「……な、に?」
「ふーん」
真子は視線を私に寄越したまま、ミルクティーを流し込む。
「花ちゃん、……ね」
「え、と」
「そんなに仲良かったの?」
「(あれ、)」
感じた違和感を隠すようにカフェオレを吸い込もうとしたが、空っぽのそれからは甘ったるい香りだけが口内から鼻へと抜ける。甘い。
「……いや、そうでもないよ」
改めて聞かれると何と答えれば良いのか分からない。
ふーん、と溢すように私を覗き込む真子は、きっと私の言葉を信じていないような気がする。隣からの訝しげな視線が痛い。彼女は、何を、考えている?
そしてがしがしとストローを噛んでいる真子は、自らその沈んだ空気が裂いた。ふとした瞬間、子供っぽかったりする。
「相手は先生だからね、」
「……うん?」
真子が最後に感情の読み取れない色で紡いだその言葉に、眼の奥、脳内が揺れる。きっと表情には出ていないはずの僅かな動揺。
そんな私を見て、にこりと綺麗に微笑む彼女は、まあいいんだけど。と呟いた。