春色デイジー


翌日の放課後、補習の教室にいるのは何故か私一人。あれ、橋本君は?


相手の苗字しか知らないし顔も見たことないけど、英語が苦手という共通点に勝手に親近感を抱いていた私は、何だか裏切られた気分でちょっぴり切ない。


ふう、と息を溢して机に突っ伏した。

丁度太陽の光が当たる席だから気持ち良い。寝てしまいそう。

眠りの淵を行ったり来たり。

そんな至福の時もほんの僅かで、がらがらと扉を引く滑りの悪そうな鈍い音により現実へと引きずり戻された。


あのシルエットは、先生、だ。


「……あれ、橋本は」

「いませんー私裏切られましたー」


むくり、と顔を上げて自然な動作で前の席の椅子に腰かける先生を見送り、再び顔を伏せる。


くそう、橋本君の馬鹿野郎。それなら私もサボったのに!赤信号、二人で渡れば怖くない……!!


「まあ、いいか」

「(いいのかよ!)」


突っ伏したままの状態で、本格的に此処に律儀に座っている自分に後悔を始めたところだ。


「橋本は罰として課題も追加だな」

良かった。前言撤回。逃げずに来て良かった。黄色信号で止まって良かった。橋本君、ご愁傷様です、なむなむ

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