春色デイジー
そして、先生が私への説明を一通り終えた時、
「でっきたー!」
卓馬が解答を埋め終えたらしく、大きく伸びをした。
本当、頭だけは良い。私のもやって欲しい。むかつく卓馬。
最後の方は完全に八つ当たりだが、恨めしい。
「早いな」
てっきり卓馬も英語が苦手だと思っていたらしい先生は、少し吃驚したようだ。先生の驚いている姿、なんだかレアな気がする。
卓馬から解答用紙を受け取った先生は、ワイシャツの胸ポケットから赤ペンを引っ張り出す。
景気の良いテンポで丸がつけられていく。もはや清々しい程の一定のリズム。
「橋本、本当に英語苦手?」
答案用紙を覗き込みながら尋ねる先生。そこには丸しか見当たらない。
「苦手じゃないっすよ。こいつと一緒にしないでくださーい」
「帰れ、今すぐカエレ!」
私を指さす卓馬の指を手で払い、きっと睨み付けると馬鹿にしたように鼻で笑われた。