春色デイジー

そして、先生が私への説明を一通り終えた時、

「でっきたー!」


卓馬が解答を埋め終えたらしく、大きく伸びをした。


本当、頭だけは良い。私のもやって欲しい。むかつく卓馬。
最後の方は完全に八つ当たりだが、恨めしい。


「早いな」


てっきり卓馬も英語が苦手だと思っていたらしい先生は、少し吃驚したようだ。先生の驚いている姿、なんだかレアな気がする。


卓馬から解答用紙を受け取った先生は、ワイシャツの胸ポケットから赤ペンを引っ張り出す。

景気の良いテンポで丸がつけられていく。もはや清々しい程の一定のリズム。


「橋本、本当に英語苦手?」


答案用紙を覗き込みながら尋ねる先生。そこには丸しか見当たらない。


「苦手じゃないっすよ。こいつと一緒にしないでくださーい」

「帰れ、今すぐカエレ!」


私を指さす卓馬の指を手で払い、きっと睨み付けると馬鹿にしたように鼻で笑われた。

< 54 / 73 >

この作品をシェア

pagetop