春色デイジー



茜色に染まった景色を自転車がゆるゆると走り抜ける。

動くたびにアスファルトに伸びた影がくっついたり、二つに分かれたり。


「待たせちゃってごめんね」

「いや、俺が勝手に待ってただけだし」

「うん、ありがとー」


私は徒歩通学だけど、卓馬はいつも自転車で登校。だから今は卓馬の運転する自転車の後ろに乗せてもらっている。

「ねえー、なんで待っててくれたの?卓馬にしては珍しくて鳥肌」

「ひでー。……優花には内緒、」

「いじわる」


昔からそうだ。卓馬はたまに意地悪だった。

いつの間にか大きくなった背中は幼い頃とは違うけれど、卓馬自身は全然変わることはなくて、私達3人の仲もこれから先変わらないんだろうな。そういうのってなんだか良い。


心地いい自転車の揺れに身を任せながらそんなことを考える。

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