春色デイジー

（春斗side）


正直、驚いた。まさか満点を取るとは思っていなかった。


「は、え。満点ですか？」


その当の本人も信じられないらしく、返却したテストを見つめながら黒目がちの綺麗な双眸をぱちりぱちり、と動かす。


「うん。正直、吃驚した」

「はい、私も」


いつもなら間違いなく噛み付いてくるであろう皮肉に、今回ばかりは神妙な顔つきで頷いた。



その横顔を見ていると、思わず手が伸びた。


指を絡めた髪の毛は、さらりと指から零れすり抜けていく。

驚いたようにこちらを見据える彼女に、本能による行動をどう誤魔化そうか。

くしゃり、と彼女の髪の毛を掻き混ぜてやる。


チョコレート色から覗いた彼女の瞳は明らかに揺れていて。伏せられたことにより、頬に落ちる睫毛の影は、少女と呼ぶには大人過ぎて女性と呼ぶには子供過ぎる、曖昧な存在を意識させた。