春色デイジー

クラスメイト全員分のノートと更には右腕にコーヒーメーカーの入った紙袋を装備して、お馴染みとなりつつある英語準備室をノックした。


(あれ、居ないのかな?)


自分から時間を指定しておいたくせに無責任だ。ノックへの返答が無い扉を、じとっと睨む。

もう一度、ノック。扉と指がぶつかる衝撃により小気味の良い音が放課後の廊下に響く。


反応無し。いい加減ノートを持つ腕が疲れてきた。とりあえず机の上にこれらを置いてから帰ろうという結論に至り、引き扉に手を掛けた。


「し、つれいしまーす」


古ぼけたプレートに比例するようにこの扉も滑りが悪い。がたがた、といくらか乱暴な音を立てて開ける。


と、埃っぽい教室内の窓際の特等席で静かに寝息を立てるのは私を呼び出した張本人。


「寝てる、」


出来るだけ物音を立てないように、腕が限界を迎えたため先にノートを机に置き行き、戻って扉を閉めた。

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