Only

光について行くと、リビングにはお義父さんがソファーで雑誌を読んでいた。

「ただいま」

そう光が言うと、お義父さんは雑誌から目を離し、こっちを見た。

光とよく似ていて、すごく優しそうな顔をしたお義父さん。

「おかえり。…彼女さんだね?」

とあたしに向かって微笑んで言った。

「はい。飯尾 輝と言います。」

その時だった。

あたしが“飯尾”と言った瞬間。

お義父さんの顔が歪んだ。

「飯尾……?」

目を見開いて言うお義父さん。

妙な違和感を覚えた。


「なしたんだよ、父さん」

光がお義父さんの変化に気付いたらしく、眉間にシワを寄せて訊く。

…あたし、何もマズイ事言ってないよね……?

数秒の沈黙の後、お義父さんがゆっくりと口を開いた。


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