Only

ベランダに出ると、お義父さんはあたし達にイスに腰掛けるよう促した。

お義父さんがはあ、と深くため息をついた。


「君のお母さんとは…昔、付き合っていたんだ。」

…そうなんだ。

でもそれが何の関係があるんだろう…

よく分からず、頭を傾げていると。


「紅茶を淹れたわよ」

お義母さんが紅茶とお菓子を運んできた。

…その時、お義父さんの顔が歪んだ気がした。

「はい。ミルクとレモンは好みでどうぞ。…名前は、何て言うの?」

お義母さんがあたしに紅茶を出しながら訊いてきた。

「飯尾 輝と言います。」

その瞬間。


パリーーン。


マグカップが床に落ちた。


< 124 / 308 >

この作品をシェア

pagetop