Only
「輝さんのお母さんが…愛さんだとは…」
輝を家まで送った後。
俺は庭で父さんと話をしていた。
母さんは俺と輝が家を出て行った後、
自分の部屋に閉じこもってしまったらしい。
何となく気まずい雰囲気の中で、俺は訊いた。
「…何で母さんは、輝にあんな事言ったんだよ…」
「母さんは、何も悪くないんだ。悪いのは、俺なんだ。」
「父さんが…?」
「そう。父さんと愛さんは昔、付き合ってたんだ。高校で出会って恋をして、10年間続いた仲だった。」
…10年間…
ついこの間初恋に堕ちたばかりの俺にとって、眩暈がするほどの期間の長さだった。
どこか遠くを見つめながら、父さんは続ける。