Only

「10年経った26の時に、父さんは愛さんにプロポーズをした。愛さんも喜んでくれた。ところが、だ。」

…哀しそうで、今にも壊れてしまいそうな瞳をする父さん。

俯く父さんの横顔は、

‘‘父さん”の顔じゃなく、‘‘男”の顔だった。

「俺の両親が結婚を猛反対した。親は、グランドホテルの社長の娘と俺を結婚させる気だった。それが、母さんだ。」

…ということは…

父さんは、母さんを愛してはいない…?

「結局、両親の理解も得られない俺達は別れたよ。それで、愛してもいない人との結婚を強制された。そのまま、20年が過ぎて…
この間、愛さんに会ったんだ。
…昔と変わらない、綺麗な人のままだった。」

「それで、会って話をしたんだな」


その先は、俺でも何となく分かる。

抑えてた気持ちが、溢れたんだろう。

離婚するとは聞いていた。

でも、その理由や父さんの過去を知るのは初めてで。

正直、混乱していた。


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