Only
ベンチに腰掛ける俺の横に座る輝。
その仕草一つ一つが、遠く儚く見えた。
「てか、ここまで走って来たの?」
輝が目を丸くしながら訊いてくる。
「まあ…な。父さんから話聞いてさ、
輝に教えたいことがあったから…」
教えたい事。
本当は、教えたくなんかない。
知らないフリして、輝の側にいたい。
俺が言うのを少し躊躇っていると。
「あたしが先に…話しても、いい?」
突然、輝がそう言い出した。
驚いた。
何をいい出すのか、少し不安だったけど
「いいよ」とだけ言って、輝の話に耳を傾けた。