Only
屋上のドアのところで立ち止まる大地。
あたしの左手首はまだ、大地に掴まれたまま。
「輝」
名前を呼ばれたと思ったら。
あたしは大地の腕の中にいた。
止まる思考。
どういう状況か、上手く理解できない。
「……大地…?」
名前を呼んでも、返事がない。
優しく頭を撫でられて、ますます涙が溢れてくる。
安心感と。
優奈への罪悪感。
混乱する頭。
「…まだ……光のことがそんなに好きか?」
苦しそうな大地の声。
さらにきつく抱き締められて、思わず眉を寄せる。
……だい、ち?
「お前が……光のことで泣いてるの見るの、ツライ」
あたしを腕から放し、大きな手で肩を掴まれる。