さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「坊や、おねえさんに、そのバッグを見せてちょうだい」

子どもはおびえた目をしてあたしを見上げた。

「いいバッグだね……ちょっと、見せて」

バッグを受け取ろうとした。

そのとき、あたしを突き飛ばすようにして、バッグを持ったまま、子どもは駆けだした。

母親が名前を呼んだようだ。

子どもを追いかけた。

商店街の人ごみをぬって、走り抜けていく。

買い物客の間に見え隠れする、うぐいす色のTシャツを、見失わないように、追って行った。

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