さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
10時すこし過ぎに、潤一さんがやってきた。

母が応対して、あたしは厨房の冷蔵庫から「ワカツキ様」と札のついたケーキの箱を出してきた。

その時、潤一さんの携帯が鳴った。

「はい、あ、OK、けいこのケーキは買ったよ」

(けいこ?)

潤一さんは、確かに「けいこ」と言った。

慶子? 啓子? 敬子? 景子?
いろんな「けいこ」が、頭をよぎる。


「お家にお持ち帰りですか?」

「いえ、大学に持って行くので、保冷剤を入れてください」

「あ、はい、じゃ、多めに入れときます。

ろうそくは、20本でいいですね。

……まいど、ありがとうございます」

あたしたちは頭を下げた。

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