さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
父と母とあたしは、いっせいに顔を寄せ合って、それを見た。

「これは、まだ,ゲラ刷りなんですけれど、一応、目を通していただこうと思いまして。
明日には本刷りに入りますので、今日ご連絡をいただいたら、訂正できます。
けれども、字の間違いとか、電話番号とか値段とかの数字くらいですね、訂正といっても。
内容を大幅にかえることは、申し訳ありませんけれど、無理なんですよ……すみませんが……もし何かあったら…………」



みどりさんが何か言っている。

しかし、あたしたちには、それはどこか遠い世界で響く物音くらいにしか感じられなかった。


あたしたちは、それぞれほとんど同じことを考えていたと思う。

(何だ、これは)
(何なの、これは)
(何よ、これ)


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