さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
第10章 人魚になりたい
8月31日。
もちろん、夏休みの終わる日。
開店早々、麻理がやってきた。
手には、あの「シティ・タイムズ」。
「今朝の新聞の広告と一緒に、これが入ってたわよ」
「うん、いつも月末に入ってるらしいね。」
今まで、「シティ・タイムズ」の発行日だの配布日だの、気にも留めなかったのだが。
「実可子のパパ、かっこいいね」
「……いや、あれは、大げさなんだよ……」
実際よりはかなり美化されていたあの記事が、嬉しいというよりは、恥ずかしい。
「さすが、実可子のパパ」
「あ、ありがとう……。でも、いい宣伝になったかも」
(そう思えば、まあ、いいか)