さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
しばらくして、麻理が言った。

「実可子、ごねんね。わたし、今日はピアノのレッスンがあるのよ」

「ピアノ?」

「先生が、あとで家に来る。30分ぐらいのレッスン」

「あ、それまでに写せるかなあ」

半分くらいしかできていない。

「ここで、写していていいよ。そして、お昼ご飯を二人で作って食べよう。お好み焼きしようよ」

「いいねえ。いいねえ。麻理のピアノを聴きながら、ノート写してるよ」

「でも、一人じゃいやでしょ。お兄さんが話し相手になるよ」

いくら慣れた麻理の家でも、確かに、他人の家に一人でいるのは気が引ける。

麻理が潤一さんを呼んできた。

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