さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「僕のアドバイスは、中途半端で、うーん、本当は、とても反省してる。
実可子ちゃんのお店のことは、僕のこれからの勉強の、いい動機付けになったと思って、感謝してるよ。ありがとう」

「こちらこそ、ありがたかったです」

麻理がピアノを練習する音が響いてきた。

「あれは、なんという曲ですか。とってもきれい」

「リストの『ラ・カンパネラ』」

時々とちるのも、また、ご愛嬌だ。

合間に見事な演奏が流れるのは、先生の模範演奏なんだろう。


下を向いて、ノートを黙々と写した。

けれども、1m先にいる潤一さんが、気にかかってしようがない。

あたしは、自分の内側からの圧力に押されるような気持ちで、声を出した。

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