さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「実は、だな、怒らないで聞いてくれ。
あの金を借りなくてはならないほど、ウチは状況が悪かったわけでは、ない」
「……」
「もちろん、余裕があるわけではないし、借金も、実際に、あったんだ。
でも、おまえの貯金まで手をつけるほどではなかった」
「じゃ、なんで」
「お前が、うわついているように思えたからだ。自分らしさを、失っているんじゃないかと思ったからだ」
「自分らしさ?」
「小さいケーキ屋の娘という自分だ。麻理ちゃんのように、金持ちで上品な人たちとつきあうのはいい……。
けれど、自分というものを見失っているんじゃないか……と、そんな気がした」