さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~

「気にしないで、是非いらしてください。
ウチの父も母も、会いたがっていますから……気にしないで。

ウチの父なんて、すごいいたずら小僧だったみたいですよ。
だから、むしろ、坊やに愛情を感じるみたいです。
全然、どうってことないです」

子どもは、母親に手を引かれて、うつむいている。

少し背が高くなったかもしれない。

「坊や、またおいでよ。果林堂のお菓子、食べてよ」

子どもは、あたしを見上げてうなずいた。


「あの、予約してなかったんですけど、クリスマスケーキ、ありますか?」

「はい、これと、これと、…………これと。どれがいいでしょうか」

母親は、ショーケースの中から、チョコレート・ケーキを選んだ。




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