さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
閉店時間を30分過ぎて、最後まで残っていた予約のケーキも、ようやく引き取られていった。

安心して店を閉めることができる。

「ママ、去年は、予約のケーキを取りに来なかった人がいたよね」

あたしは思い出して言った。

「ああ、そうだったわね」

次の日になっても来なかったので、申し込み用紙に書いてあった番号に電話した。

すると、一人暮らしのお年寄りで、ケーキを予約したことを忘れていたのだった。

「一人暮らしだから、本当は、ケーキもいらなかったんじゃないのかしら。でも、注文したのよ。24㎝のチョコクリームを」

「家族がたくさんいた頃の習慣で、注文してしまったんだろうね」


母は表に出て行き、シャッターを閉めた。

「うわあ、寒いわよ。明日は雪かも」

商店街の他の店は一部の食料品店や飲食店を除いて、だいたい閉まっていた。


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