さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「麻理ちゃんみたいなお嬢様じゃないだろ。公立中で十分だ」

という両親を説得して、

「塾なんかには行かないで勉強してみろ。それで合格したら、行ってもいいぞ」

という約束を取り付けた。

そして、受験し、合格した。


父は、塾にも行かずに、実可子が合格するはずがない、と思っていたけれど、一度約束したことだから……と、進学を許さないわけにはいかなかった。



あたしは、入学してなお一層、その学校が好きになった。

中学から、高校・大学と、受験せずに内部進学ができるのもよかった。

受験勉強に時間をとられずに、麻理と一緒に青春を謳歌できる。

……はずだった。


(でも、もしかして、私が私立中に進学したせいで、家が経済的に苦しくなったのではないのかな)

父の話を聞いてからというもの、そういう考えが浮かんで消えなかった。
自分を責める気持ちが、ちくちくとあたしを刺していた。

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