さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
父は、そんなあたしに視線を合わせずに独り言のように言った。

「夏場は、アイスクリームとか、スイカとか、ケーキのライバルが多い。
食欲も落ちるしな。店でも、ケーキより値段が安めの、ゼリー類が売れるだろ。夏は、厳しいぞ」

(チャンス!)

「ねえ、パパ、ウチのケーキって、『イチゴショート』とか、『モンブラン』とか、普通すぎない?」

「え?」

「あんまりにも、ベタじゃん。ネーミングも、見かけも。もっとおしゃれにしようよ」

「ベタ?」

「なんか、いかにも、ありそうっ……てカンジ。ダサイじゃん。『スイーツ』っていうカンジにしようよ」

「いいんだ、ベタで。ベタベタのベタで、いい」

いささかむっとしたような声だった。


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