さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「金がないなんていうから、だから、あたしは必死になってるじゃん。他の友だちが遊んでいるときに、ただ働きしているんだよ。あたしは、店の犠牲だよ」

早口で、一息にまくし立てた。

そして一つ大きく息をして、胸の内にくすぶっていた、ある思いを打ち明けた。

「あたしは、自分が私立中学に進学したから、パパが無理して支店を出したんじゃないかと、思ってる。
あたしのせいで、家がお金に困って、万一裕太が高校にいけなくなったりしたら、と思うと、たまらない。……だから、いろいろとがんばりたい」


あたしたちは、黙ったまま動かなかった。

長い時間がたったような気がした。

父は挙げた手を、下ろした。

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