さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
あたしは、見よう見まねでケーキを作ったことがあるけど、うまくはできなかった。
まともにできたのは、ホットケーキとクッキーくらい。

店に出しても恥ずかしくないケーキなんて、あたし一人では無理だ。

でも、クッキーなら……



「パパ、イヌとか、ネコの形のクッキー型、って、売ってないかな?」

「どうかな、どっかにあるかもしれんな」

「どこで売ってるの?」

「買わなくても、昔のでよければ、持っているが……」

「!」



厨房の天袋から父が出してきたのは、20年も前のクッキー型だった。

上質のステンレスでできていて、新品同様にきれいだった。

「いい道具を、きちんと手入れして、長く使う。これが職人というものさ」

ちょっとだけ父を見直した。

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