さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
すっかり良くなったあたしに、おばあさんは何度も「ごめんなさいね」と「ありがとう」を繰り返した。
「こちらこそ、倒れちゃって、ご迷惑かけました。ごめんなさい」
「……あの……、ここのお宅は、ウチの店まで歩くと、結構時間がかかると思います。だから、もし、ケーキが食べたいときは、お電話ください。
わたしか父が、ここまで、配達します。
ショートケーキ1個でも、かまいません」
そして付け加えた。
「果林堂のケーキを、喜んでくださる方の所には、わたしも、喜んで運んできます」
おばあさんは大きく目を見開いて「ありがとう」と言った。
目が潤んでいる。
「ありがとう。おじょうちゃん。
おじょうちゃんのお名前は、なあに?」
「はい、村中実可子です」
「村中みかこさん……。
あ、もしかして、重蔵くんの娘さんかしら?」