さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「はい。重蔵『くん』って、父をご存知ですか?」

「おほほほ……ええ……。昔の知り合いですよ。
そうね、これからは、お願いしようかしら。配達」

「はい、喜んで持ってきます。電話番号は、さっきのレシートに書いてあると思いますから、ご遠慮なく、いつでもどうぞ」

「ありがとう、電話させてもらいます。私の名は、城之崎春子です。よろしくね」

そのあと、城之崎春子さんは、学校のことや家族のことなどを尋ねた。あたしは、あれこれと話してあげた。

学校の担任の先生が、ある日、何を思ったか、背広なのにカウボーイハットをかぶって来た話。
それ以来あだ名が「カウちゃん」になった話。

弟が、夜中に居間でこっそり、エロい深夜番組を見ていて、父に見つかり、こっぴどくしかられた話。
「なんで、ぼくがここにいるってわかったの?」と尋ねた弟に、父は「俺も、あの番組を見にきたんだ」と平然と言い放った話。

そんな、つまらない話だが、春子さんは大笑いして聞いていた。

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