さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「俺に、その20万、貸せ」

「あ、あたしの、貯金を、パパが、つかう?」

「すまんな」

殊勝に頭を下げている。

あたしの頭の中では、「怒」という文字が爆発した。

「何言ってるの?あたしのお金だよ。なんで、パパが借りるのさ。
あたしは、そのお金で、麻理と、北海道に旅行に……」

「店を閉じることにした」

父があたしを遮って言う。

「店、といっても、例の駅の北口の支店だ。うまくいかん。
やめだ……従業員も、やめてもらった」

茶碗をちゃぶ台に置いて、腕組みをした。


「あ……支店を……」

果林堂は、さくら町ゆめ通り商店街で店を開いているが、1年半くらい前に少し離れた駅の北口に店を借りて、支店を出した。

その店が、うまくいかず、閉店することになった、ということらしい。


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