さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「退職金代わりに、少しでも金を渡したい」

「……」

「店は閉めても、あの店を開くときに銀行から借りた金の返済はしなくてはならん」

「……」

「それから、あのテナントは10年契約で入居する予定だったが、2年も立たないで出て行くことになるから、違約金が必要だ。」

「イヤクキン?」

「まあ、10年間そこを借りる約束を果たさなくてすんません、というおわびのお金だ……」

「……」

細かなことは分からなくても、店が大変な状態らしいということだけは、あたしも理解できた。

そういえば、以前からウチを担当していた銀行員が、昨夜やってきて、父と話し込んでいた。

(あれは、北口支店を閉じることについて、話していたんだな)
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