さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
「いや、そういうことではなくて……。イヌが食べるなんてことは……。イヌが食べる………」

みどりさんは、父の剣幕に、圧倒されていた。

「イヌが食べる」と繰り返されて、父はますます頭にきたようだった。

「あんた、どんな下調べをしてるんだ」

と、にらみつけたその顔は、まさしく「鬼」だった。

「キャー」

みどりさんが、悲鳴を上げた。

まるで、痴漢か強盗の被害を受けたかのような悲鳴だ。

もちろん、父が暴力をふるったわけではない。

ただ、初めて見るみどりには、父の怖さは「暴力的」だったのだろう。

(うわあ、逮捕される!)

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