【短編】いつも側に
自分の約束を交わした小指を見た。
『約束…か』
小さい頃の約束なんか、覚えてるわけないよね…
思い出を掻き消すようにグッと手を握りしめた。
「優美!!」
『っ、拓真?!』
大声で私の名前を叫ぶ拓真にビックリして振り返った。
ザザザッと草むらの坂道を降りて私の所に一直線に向かってくる。
「やっぱり、ここにいたのかよ」
『何でわかったの…っ』
「あ?それは秘密」
呑気に口笛を吹いて話をはぐらかした拓真。
何よ。まだ言い足りないわけ…??
「んな顔すんなよ」
『…』
「大事な事言いに来ただけ」
大事な事??
いつにもなく真剣な表情で私の目から視線を外さない。
短い時間をやたら長く感じる…