理想の都世知歩さんは、



それに俺もふと笑って返した。


「そんな宵一にはこれを授けよう」


「…。いや要らない」

「まだあげてない」
「でも要らない」

「いいからいいから」
「いやだから」

「お願いお願い」

「やめろ」

「やめない」
「やめっ」

そのまま笑顔の菜々美に、思い切り頭に何かを被せられる。


「あらま!可愛い~宵一可愛い~」
「……」

「というか流石に頭ちっちゃいな…」


顎に手を置いて首を振る菜々美を見上げる。

何を言っても無視されそうだから無言で頭から物体を引き千切る。



これはサンタ帽だ。



「それね、サ「しってる」

「泣く子も黙るサンタさんになれる帽子だよ」


言い直した。


「元気付けられる俺がサンタさんになるの」

「それもそうか…。でもいいよ、似合ってるからね」





…しりあいっていうのは、衵のこと。


袿が電話で言ったから。


相変わらず元気かと聞いてしまう癖がある。自分でも親かって思うけど、本人とは夏以来一度も会っていないけど。


時々、ふと思う。





クリスマスは、明後日。



困って笑って、菜々美が担当に呼ばれた後。


机に置いたサンタ帽がそれを気付かせた。





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