理想の都世知歩さんは、
触りたい 後編
【SIDE 都世地歩 宵一】
――色々と、己の無知を知った焼肉飲み会から一か月。
もうアパートを出た所の土の、霜を踏む音にも慣れた二月中旬になっていた。
俺はずっと、どうしようか解らなくて。
衵もずっと、いじらしく。
あのまま。
清白と晴れた今朝も挨拶を交わした後、洗濯物を干そうとする衵の指が赤いのが目に入って代わると言ったら、大丈夫と言われて地味にダメージを受けた。
表情が、もう。
あとあれ。
衵の飯当番で、和食を目にする度思う。
こいつは、いつから…?
というか本当に?嘘じゃ?ドッキリじゃ?衵、律に仕掛けようと目論んでいたし。
幾度となく疑うも、ふと視線を上げた先、衵を見て目が合った瞬間こっちが恥ずかしくなるほど、何で今まで気が付かなかったんだろうと思うほど、衵が分かり易いことを知る。
同時にそれを、目を逸らすくらい可愛いと想っていることも知っている。
…それで目を逸らしてしまうと、ほら。
しゅんとした後小さく笑って。
「衵」
「?」
「今日の夜、飯何がいい?」
「うーん…」
触れようとすると、逃げるのに。
「あ、ししゃも買ったんだ。でも鍋もいいなー」
悲しい顔をすると、寄ってくる。
「じゃーどっちも作る」
昼は、グラタンだから。