理想の都世知歩さんは、




寝癖も服装も気にならない思いのまま一階へ降りる。


101号室のドアを前にして、外の薄明るさに、どうしようと心内で呟く。


早朝だし眠っているはず。


それでも家の中で待っているのは許せず其処に身を置いたまま、しゃがんだりしているとニ十分ほどが経過した。

寒さというよりは逸る気持ちを押さえつけるかのように握りしめた手。


蒼空にもうすぐ陽が昇ろうとしていた頃、チカチカと家の中の電気がついて、顔を上げた。



思わずドアへ歩み寄る、と、部屋の内の玄関から聞こえたのは物音で。



あ、と思い、力の入った肩で立ち止まっていると目の前でドアが開き、貴堂の王子様の身長に合わせて見上げていた私はそこにない姿に首を傾げ、視線を下ろした先に、幼い男の子の姿を見た。



「え……っぐは」



固まった瞬間、するりとドアを抜けた幼稚園生くらいの男の子は私の鳩尾目がけてパンチを喰らわせた。


姿に見合わず中々重い拳を持っているその子は、よろめいた私に向かって大声で「てめぇか!!」と叫ぶ。声は朝靄に響いて流れ行った。



へ。


え?



続く遠くで、早起きカラスが鳴いている。




私は王子様よりも少し金髪の和らいだ髪を持つ男の子に焦点を合わせる。


ちっちゃくなった?と、非現実的なことを考えながら鳩尾に置いた手を涙目で擦ると、再度男の子が拳を大きく勢いづけて振りかぶったので、それはもう必死こいて目を瞑った。

ちっちゃくなった王子様に、罰を受けるような気持ちだったかもしれない。


けれど拳は振って来ず恐る恐る瞼を持ち上げると、再びドアの隙間に身を潜めたその子が震えていて。

私もしゃがんで目を合わせると、彼は口を開いた。


「りっちゃんまたせたのてめぇだろ」

「!」





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